半調節性咬合器

半調節性咬合器で調整できるものは、何でしょうか?
矢状顆路角と平衡側の側方顆路角ですね。
さて、本当にベーシックな話なのですが、実際にどのように調整していくかイメージができますか?
今回はここのお話です。

 

 

ベネット角とベネット運動の違いをいえますか?

まずは、基本から。下図は、スラスラとイメージできるようになる必要があります。
側方運動でたくさん動くのは作業側よりも、平衡側の下顎頭=顆頭です。
側方運動時に前下内方に動きますが、その内側に動く角度は平均的に15°で、これを「ベネット角」といいます。

「ベネット角」には別名があって「側方顆路角」ともよびます。「顆」=「下顎頭」でそれの通る「道=路」なので「顆路」です。「側方」つまり「左右方向」に関してスライドしていくときの角度なので、「側方顆路角」です。下顎を真横から見た時の動きでは「矢状顆路角」もあって、これは上下方向にスライドするときの角度を示します。

ちなみに、側方運動時、作業側では、あまり下顎頭は動きません。真横にちょこっと動くだけです。
この運動を「ベネット運動」と呼びます。小さい円錐形の範囲で動くのが教科書とかにのっているかと思います。

また、平衡側で内側に動くとき、動き始めの最初の方は真横に動きます。(関節内の空洞があるので)
やがて組織にぶつかり、15°ぐらい(=ベネット角)で滑っていきます。
前者を、イミディエイトサイドシフト
後者を、プログレッシブサイドシフト
と呼びます。

ベネット運動、ベネット角

 

 

フィシャー角とは

下図を御覧ください。
前方運動した時に、顎関節の前方の斜面(関節結節)を滑って斜め下に下顎頭が動きますが、
この角度を「矢状(前方)顆路角」といいます。
また、側方運動した時にも沢山うごく平衡側の下顎頭も同じように斜め下に動きます。
この角度を「矢状(側方)顆路角」といいます。
そしてこのふたつを比べたときには、側方運動時の方が急傾斜で滑っていきます。
この2つの角の差をフィッシャー角といい、一般的には5°ぐらいであるとされています。

 

半調節性咬合器で調節できるもの

さて、やっとここからが本番です。
半調節性咬合器で調節できるものと、実際どこらへんをいじっていくのかを下の図にまとめました。
基本的には、

  • 矢状顆路傾斜
  • 平衡側の側方顆路角(ベネット角)

が調整できます。

下図は、顆路の調節をするとき、咬合器のどこをいじるのか、をまとめているのですが、
この場面に至るその前に、上下顎とも模型を中心咬合位で付着が完了している必要があります。
すなわち、フェイスボウで上顎を3次元的に正しい位置に付着してから、
中心咬合位のチェックバイト(いわゆるバイト)を噛ませて下顎を付着します。

半調節性咬合器_2

 

顆路の調整をしていきます。
前噛みの状態でとった、前方チェックバイトを模型に噛ませて、
ピッタリあうところまで、上の図の青色の矢印の矢状顆路角を調節して、あったところで固定します。
次に、側方チェックバイトを噛ませて、ピンク色の平衡側の側方顆路角(ベネット角)を調整します。

実際の顎の動きをイメージしてみましょう。

患者さんが下顎を前に動かした時、下顎頭は関節窩の形にそって滑って動きます。
その最終地点の状態を、前方チェックバイトで記録し、咬合器上で再現しているので、
前方運動はほぼほぼ患者さんと同じ動きができるようになっているはずです。
(本当は曲線的に動きますが、半調節性咬合器では直線的な動きまでしか再現できません。)

また、側方運動も、同様です。より動く平衡側の方の内側への動きを、
患者さんの側方運動の最終地点の記録から、模型上に再現したので、
ほぼほぼ同じようなベネット角で側方に動くようになっています。

半調節咬合器では再現できないもの

半調節咬合器では、作業側の動きは、再現できません。
とても小さい動きなので無視しても構わないということだと思います。
また、フィッシャー角も再現できません。
すなわち、本来であれば、側方に動くときの矢状側方顆路角は
前方の時よりも5°ぐらい大きいはずですが、これが、再現できず、
前方運動の時の同じ角度で矢状方向の動きをします。

 

 

咬合器の使い方がわかりやすく書かれている本

全部床義歯の教科書のような参考書なのですが、
「図説無歯顎補綴学―理論から装着後の問題解決まで」がわかりやすいです。
図説、と謳っているだけであって、イラストや写真をふんだんにつかって、
文章だけでイメージしづらいところを、一瞬でわかるように書かれています。
咬合器専門の本も何冊か開いてみましたが、ちょっと専門的すぎてとっつきずらかったです。
この本は基本、全部床義歯の話がのっているのですが、咬合器についてシンプルな説明でよいです。

たとえば、この他に調節可能な、切歯指導板、の調整の仕方などかなりわかりやすいイラストで説明されています。

咬合器の調整図説無歯顎補綴学―理論から装着後の問題解決まで
山県 健佑  (著), 黒岩 昭弘  (著) 学建書院 (2004/05)  より抜粋

あとは、パラトグラムとかも全部の音に対して、口の中の状態どうなってるのかとか、イラスト書かれてて感動しました。

パラトグラム

図説無歯顎補綴学―理論から装着後の問題解決まで
山県 健佑  (著), 黒岩 昭弘  (著) 学建書院 (2004/05)  より抜粋

他にも顎堤の吸収と口頭傾斜角の選択方法とか、まじ感動しました。

顎堤と咬頭傾斜角

図説無歯顎補綴学―理論から装着後の問題解決まで
山県 健佑  (著), 黒岩 昭弘  (著) 学建書院 (2004/05)  より抜粋

いろいろみましたが、これほど端的でわかりやすく、体系的に語られている本はなかったです。
おすすめです。
補綴系はボクらの時代、昔に比べて、実習の時間が極端に削られていることもあって、
実際に体験したことないことを、教科書読んだりや写真みて、想像で解いていかなければいけないです。
イメージ力がないと問題に対応できない感じなってきています。

なので文章だけから実際の現象をイメージするのが苦手な人にはすごい良いと思います。
有床が苦手に感じている人もまず、この本ペラペラとめくってみるだけでも、
ああそういうことなのか!とガッテンが行く部分沢山あると思います。
医歯薬出版の教科書と、テクニック、それぞれFDとPD、計4冊すでにかっているとは思いますが、
それでもイメージが及ばない部分がたくさんあると思います。
まずは図書館にあると思うので、ぜひ見てみて下さい!
一つでもためになりそうなイラストがあれば、その本はもう買うべきです。

 

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