「プレウェッジ」と「ウェッジ」

教科書に書いていないけど、区別が重要な「プレウェッジ」と「ウェッジ」

下の2つのウェッジはいずれもモノとしては同じですが、使用方法の違いで名称が変わります。

Wedge prewedge

保存修復学21 第3版 2008 田上順次他 永末書店 より

 

プレウェッジ=歯を削る時に使う

「感染歯質を削るとき」に使うウェッジです。歯の間に挟んで歯と歯の間を開きます。また、誤って歯間乳頭を削ってしまわないように、プレウェッジを挟んでガードします(歯間乳頭の保護)。また、歯を離すことで隣接面を削りやすくする目的もあります。下のウェッジとものとしては全く同じものなんですが、使い方で名前が変わっています。

  1. 歯間離開
  2. 歯間乳頭の保護 

ウェッジ=充填する時に使う

プレがつかないウェッジは、「CR充填するとき」につかいます。もちろん、プレウェッジもウェッジを使用するので「歯を削る時」にもウェッジを使うので、どちらの用途にも使うのですが、特に歯を削るときのウェッジを「プレウェッジ」と呼びます。

歯と歯の間を離して、隣接面の接触点の形を作るスペースを作ります。隣接面が削られた状態では、隣接面の接触がなく、歯と歯の間が狭まっているので、そのままCRつめても正しくない隣接面形態になります。そこで、歯間にウェッジを挟んで歯間にスペースを作って、それぞれの隣接面の形態を作った後、ウェッジをとることで、やっと、正しい歯間距離で、隣接面が接触する、という流れです。

また、CR充填しやすいように隔壁(マトリックスバンドや透明ストリップスなど)の固定も同時に行うことができます。この場合、歯間乳頭の保護という目的はありませんね。また、歯を離すことで光照射もいろいろな角度から行うことができるようになる利点もあります。

  1. 歯間離開
  2. 隣接面の接触点の回復(歯と歯の接触点が点で接するように綺麗な曲線をつくれる)
  3. マトリックスなどの固定
 

「 隣接面の接触点の回復」とはどういうことか?

 ウェッジによる歯間離開のポイント2で、「 隣接面の接触点の回復」とありましたが、これはどういうことなのでしょうか?以下のような図を描いてみました。こちらを見るとよりわかりやすいかもしれません。
 
歯間離開 隣接面接触点の回復
 
Bの状態で、充填が完了して、ウェッジを引き抜くと、元の正常な隣接面の状態に戻りますよね。普段の清掃や食物残渣の残りやすさを考えると隣接面は、点接触が理想的な形態です。
 
小児の乳歯DE間は面接触なので、より、う蝕になりやすかったですよね。点接触がやはり好ましい形態です。また、隣接面に接触点が無いと今度は、食片圧入などで歯周疾患へのリスクが高くなってしまいます。直接法のCR充填はチェアサイドでやるので、難しいですが、このあたりも考慮して治療に臨んでいきたいところです。
 
 
 
 
 

国家試験における「プレウェッジ」と「ウェッジ」

国家試験の問題を通して、「プレウェッジ」と「ウェッジ」を意識的に見ていきましょう。これまで学んだことの復習にもなります。写真で歯間に挟んであるものが、プレウェッジなのか、ウェッジなのか、予想しながら、問題を解いていきましょう。
 
107B-4
43 歳の女性。下顎左側第一大臼歯の歯質の破折を主訴として来院した。自発痛は なく、歯髄電気診に反応を示す。コンポジットレジン修復を行うこととした。修復 操作中の口腔内写真(別冊 No. 4)を別に示す。 次に行う操作はどれか。 2 つ選べ。
スクリーンショット 2017 01 13 2 26 27
 
a 隔壁の設置
b 修復物の除去
c 齲蝕病巣の除去
d ウェッジの除去
e ボンディング材の塗布
 
正答 b, c
 
↑この問題の場合は、「プレウェッジ」を使っていますね。CR充填時の「ウェッジ」ではないので、隔壁は関係ない、ということになります。
 
 
 
103B-8
32歳の男性。下顎右側大臼歯部の食片圧入を主訴として来院した。自発痛はなく、温度診に異常を認めない。コンポジットレジン修復を行うこととした。初診時の口腔内写真とエックス線写真とを別に示す。
適切なのはどれか。2つ選べ。
スクリーンショット 2017 01 13 2 33 10
スクリーンショット 2017 01 13 2 33 14
 
a プレウェッジを行う
b ラバーダム防湿を行う。
c レジンコーティングを行う。
d エアブレイシブで切削する。
e 水酸化カルシウム剤で覆髄する。

 

 

正答 a,b

 
↑この症例もプレウェッジです。感染歯質を削る時の、隣接歯の保護と歯間乳頭の保護を行います。国家試験では、ラバーダム無しの治療はほぼないので、選択肢にあるとほぼ、正答肢になることが多いです。処置の順番を聞かれれて、ラバーダムはもっと後ですよ、みたいな感じで答えにならなかったりすることはありますが、全ての歯内治療、CR修復などではラバーダムを使用して治療を行う設定になっています。 
 
 
 
 
103D-52
34歳の女性。下顎右側第一大臼歯の冷水痛を主訴として来院した。2週前から一過性の冷水痛を自覚するようになったという。電気診に正常に反応する。コンポジットレジンで修復することとした。初診時のエックス線写真と感染象牙質除去後の口腔内写真とを別に示す。
修復に必要なのはどれか、2つ選べ。
 
スクリーンショット 2017 01 13 2 40 08
 
a ウェッジ
b 圧排用綿糸
c セメント裏層器
d マトリックスバンド
e サービカルマトリックス
 
正答 a, d
 
↑これは、充填時の「ウェッジ」です。「プレウェッジ」ではありません。ちょうど下の右の図のような感じにして、CR充填をしていきたいので、ウェッジとマトリックスバンドを使用するのが正答になります。この作業のことを「複雑窩洞(隣接にも咬合面にも開いている窩洞)を単純窩洞(咬合面にのみ開いている窩洞)にする」という表現を使うこともあります。言葉の使い方がわからないだけで、問題が非常に難しくなってしまうことが多いので、知らない表現がでてきたら、その場で誰かに聞くか調べるかして、しっかりと自分の中でイメージできるようにしていきましょう。知らない言葉を潰していくことは、合格のために重要な習慣だと思います。 

Wedge prewedge

保存修復学21 第3版 2008 田上順次他 永末書店 より

 

 

【保存修復学】のお薦め参考書

1.保存修復学21 ★★★

「医歯薬出版の保存修復学」と上の「保存修復学21」が2大巨塔ですが、僕は上にもリンク貼ってる「保存修復学21」をおすすめします。理由は写真が大きいからです。あとは診断や手技などのまとめからも21のシリーズのほうが、読んでいてわかりやすいです。「医歯薬出版の保存修復学」は網羅的に書いてありますが、写真や図が小さく文章で理解する割合がより多い印象を受けます。勉強が進んできてだいたいのことがわかってくると、こちらのほうが面白く感じてくるのですが、最初の段階では「保存修復学21」を携えて勉強したほうがよりわかりやすく学ぶことができると感じています。

編集仕方というか、ページのまとめ方や文字と写真、イラストの並べ方など「保存修復学21」のほうが読んでいて非常にわかりやすくできていると思います。歯内療法でも同じ構造で、医歯薬出版のものよりも、21シリーズのほうが僕はわかりやすいです。この本が教科書に指定されている学校はうらやましいなーと思います。

 

2.カラーアトラスハンドブック 保存修復臨床ヒント集 ★★☆

臨床問題を得意になるコツは、基本的な処置や考え方などを1.にあげたような教科書の内容を一通り読んでから、あとは、臨床の処置の写真をとにかく見て、知らない器具や処置の種類を減らすことです。
このカラーアトラスハンドブックシリーズは少し古いのですが、それでも基本的な処置に関してはかなりリアリティつかめるのでおすすめです。特に文章読むのが苦手で、、、という人は暇な時にパラパラめくっておくだけでも、すごくためになると思いますよ。

もちろん、5,6年次の臨書実習のリアルな処置と教科書の内容を自分で紐付けることは非常に重要です。教科書は、臨書実習の具体的な処置内容をまとめてより抽象的に、学術的にまとめたものです。机上の勉強ではそれらをつかむだけなのでなんとなく体感がなくぼんやりとした理解ですが、その文章化された診断や治療内容を具体的なやり方・道具、手順などを実際の体験と紐付けることでより深い理解になります。そうすると国家試験のやったことない臨床問題でも、頭のなかでイメージして、正解に自分でたどり着けることが多くなります。

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